■「失敗の本質」

このGWはがっつりと仕事が組み込まれている。でも、周りがお休みということもあり、自分の時間が結構取れそうなので、机に積みあがった本を一つ一つ読んで過ごそうかな、なんて思っている。


その第一弾として先ほど読了したのが野中郁次郎先生をはじめとする6名の著者の共同研究である「失敗の本質」。大東亜戦争における日本軍の代表的な6つの作戦の失敗を取り上げ、各々の作戦の失敗要因を分析するにとどまらず、全体を通じて日本軍という組織が抱えていた欠陥や戦略上の不備について記している。これまでも経済紙が推薦するビジネス書100選のような特集でも上位に取り上げられており、震災直後の政府対応に対する批判のソースとして経済学者が取り上げることもあって、私も書店で買ってみた。当然のことながら事例の記述は軍事的用語が多いけれども、その背後にある組織・戦略上の欠陥についての分析は、ビジネス上で当たり前のように使われる言葉が多用されている。初版は1984年と、約30年近く前になっているが、軍事的なことに興味がある人も、組織論や戦略論に興味がある人も、古さを感じない読みごたえのある書籍だと思う。


著者達も認めているし、多くの書評にも書かれているけれども、ここで結論付けられた日本軍の組織・戦略の欠陥というものは、現代の日本企業においても相変わらず見られる。そして自分でも深く実感したのが、その「失敗の本質」要因が私自身の中にも深く刻まれている、ということ。失敗の分析を読み進めながら、何か自分のことを言われているような、そんな気分になった本である。あまりそういう経験はない。


企業として目的・目標・戦略を掲げながらも、あるスタッフが一生懸命取り組んできた案件や面白そうな案件が出てきたとき、その頑張り(プロセス・動機)を評価し「やってみなければわからない」として、後付け的に帰納的に目的と絡めてGo!することを決断する。そこには大いに「モチベーションを下げたくない」という人間関係維持の言葉が連発され、このタイミングを過ぎたら「Point of No Return」だとわかっていても、「空気を読む」ことを強要されているような気分になり、振り上げたこぶしを下ろすような言動は行わない。さらにそのプランで経営資源が分散される可能性もあるが、「気合いで」乗り切ろうとし、コンティンジェンシープランも用意しない。こんな状況(これは非常に最悪のケースであるが)というものに思い当たる節のある人も多いのではないだろうか?


「自己革新能力」こそがそういう状況を打破するすべだと本書は説くが、その前提になる正確な現状把握を可能としてくれる物差しを提供する書籍である。


失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)

失敗の本質―日本軍の組織論的研究 (中公文庫)