■「History」は誰にもまねできない

金曜日の夜ご飯は、神戸三宮にある「てじ八菜」の韓国料理。最近有名になりつつある「みやじ豚」が食べられる関西で唯一のお店ということで、プラスリジョン社長の福井さんがチョイス。この日は福井さんを慕っていろいろな人たちが集まるということで、楽しみにして参加した。


いや〜、美味しかった!


みやじ豚のサムギョップサルはもちろんだけど、チャプチェやキンパといった料理もものすごく美味しかった。でも一番「美味しかった」のはそこに集まった人たちの濃いトークかな、と。


今回参加したのは私を入れて合計8名。「オニオンキャラメリゼ」を製造販売するプラスリジョンの福井さん、スカイプを活用してフィリピン人講師による英会話教室WAKU WORK ENGLISHを営む山田さん、NGOゆいまーるハミングバーズを運営しながら法科大学院に通う照屋さん、ETICの山内さん、大阪大学の先生をしている道畑さん、P&G社に勤める川上さん(道畑さん、川上さんは学生さんのときプラスリジョンのお手伝いをしていた)、有機農家をバックアップし地産地消を促進する活動をする光岡さん、そして僕。みんな組織の代表だったり、自分の思いを追及したり、自分の人生を自分で切り開いている人たちなので、話が非常に面白い。あっという間に4時間が過ぎていった。


この人たちの話は奥が深すぎて面白い。たとえばプラスリジョンの福井さん。「オニオンキャラメリゼ」が主力商品だが、彼女のミッションはその商品を普及することではなく、障害者の自立支援を助けること。オニオンキャラメリゼは現在精神障害の人たちの施設で作られている。日本においてそうした人たちの勤労機会もまだ少なく、月々のお給料が雲数千円という現実の中、どうやったら価値ある仕事としてしっかりとお給料をもらえ、自立ができるような形になるかということを10年近く模索し、ようやくこの形にたどり着いた。そして、WAKU WORK ENGLISHの山田さん。彼女も英会話学校はあくまでも手段。目的はあくまでも孤児や貧困で困難に直面しているフィリピンの若者に対して、英会話学校という就業機会そして賃金の機会を提供することで、自立の機会を創出すること。照屋さんも法科大学院に通っているのは、モンゴルのマンホールチルドレンを救うために、モンゴルの法律自体を変えることができないか、と考えた末での決断だ。ほかのメンバーも現在の名刺には書かれていないストーリーが存在する。とてもじゃないけど4時間では堪能しつくせない。


当然のことながら、みんなそこにいたるまでに想像を絶するような苦労をしてきている。プラスリジョンの福井さんはかれこれ10年ほどの付き合いになるけれども、現在までの道のりはまったく平坦ではなく、強烈なアップダウンの繰り返しであった。でも金曜日に集まったみんながそうした苦労話を「そういえばそんなこともあったね〜」なんて軽く笑い飛ばしてしまう、そのさりげなさが魅力的だった。


最近事あるごとにソーシャルメディア時代においては「共感」が重要だ、ということをつれづれと書いてきたけれども、それは単に「ミッション」や「夢」といった将来のことだけでもなく、また「プリンシプル(行動指針)」や「アティチュード(態度)」という現在のことだけでもない。過去どんなことをやってきたのか、どんな困難を乗り越えてきたのか、どんな苦労をしてきたのか、そしてそれが今にどうつながっているのかという「ヒストリー(歴史)」も大きな共感の要素になるのだろう。そしてそのヒストリーというものは、誰にも真似できない競争優位性になる。誰一人として時計の針を戻すことはできないからだ。


「苦労は買ってでもしろ」というのは、現在のシーンにおいてこそ、本当に意味があるのかもしれない。それが「共感」につながる大きな資産になるのだから。


鷲巣はへべれけです・・・