■Leadership and Choice

リーダーシップとは何なのだろうか?


創業10年たち、もはや「ベンチャー」というには年をとってしまった感のある会社において、次の10年を見越した飛躍のパスを描き率いてゆくためには、自分のリーダーシップというものをもう一度確認したい、と日々感じているわけであるが、そんな訳で今回のpodcast講義は、元ヒューレットパッカードのCEOで、現在は政治家に転身しているCarly Fiorina氏のリーダーシップについての講演(http://ecorner.stanford.edu/authorMaterialInfo.html?author=240)を聞いてみた。Fiorina氏は、AT&Tルーセントテクノロジーといったハイテク系のシニアマネジメントを経て、HPの女性CEOとして、コンパックとの合併など大胆な意思決定を下したことで印象深い。


Fiorina氏は、リーダーシップは「みんなを変化に導きだすこと」と単純に結論づけるが、同時にそれが非常に難しいということを述べている。なぜならば、自然の摂理として、(良い悪い、という話ではなく)人間は誰もが変化に対して恐れを感じるからだ、ということを強調する。だからこそ、まずはその自然の摂理を強く認識する、そして変化に導きだすために、ビジョンを描き、その変化を遂げたらどんないいことがあるのかを明確にし、人々の共感を束ねることがリーダーの重要な役割だとする。


またリーダーシップを三つのCで表現しており、まずは質問をする能力と傾聴する能力(=Capability)を持ち、多様な考え方を持つ人たちを一つにまとめ上げ(=Collaboration)、決断力・視点・倫理観に裏付けられた自身のキャラクター(=Character)を磨き上げることが重要であると説いている。


内容としてはそれほど目新しいことはないものの、やはり迫力というか、あれだけの伝統ある会社のかじ取り(それも大きな変革時期におけるかじ取り)を担ってきたリーダーシップにじかに触れると、自分のやる気やマインドに強く訴えかけてくる何かがある。リーダーとしてくよくよ悩んだりするとき、この講演を聞くと元気が出るのかもしれない。


一つの疑問は、「変化」を成し遂げるにも時間的制約が存在するが、これとどう取り組むか、ということ。特にHPの場合は、創業以来の確固とした「HP Way」という崇高な理念や行動原則が浸透しており、簡単に方向転換などできない。一方で、Fiorina氏が招聘されたその時の経営環境を考えると、悠長に構えている時間もない。限られた時間軸の中で変革を成し遂げるために、耐えることや説得することはどこまで重要なのか。一部の「変革者」と小さな成功を導きだすことで既成事実を作りそれを持って「中立」な人たちを呼び込むのか、それとも強引に強制的に変化の方向にかじ取りを持っていくのか、剛腕のイメージの強いFiorina氏がどのような選択をするのか、聞いてみたかった気がした。


お勧め度:★★★