■コミットメント経営

前回に引き続きモチベーションに関するお話をする。当社は創業10年ということで、一つのベテランの域にさしかかる。事業内容には特に大きな変化がないが、やはり数名で事業全体を遂行していた創業期と、4拠点80名ほどのスタッフを抱える現段階では、組織の在り方も文化も変わってきているというのは正直なところだ。創業当初に多かった「犬が好きだから」という理由で入社した者、4年制大学を卒業し起業を見据えている者、事業譲渡で自分の意図に関係なく当社員になった者。そのバックグラウンドは様々だ。当然考えていることが異なるので、一人ひとりモチベーションの源泉も違う。多様化は認めるべきだとは思うが、会社として芯の通った核となる考え方はどのようなものなのか、そんなことを日々考えるようになってきたわけだ。


そんな中、今回この「コミットメント経営(ジョンRカッツェンバック著)」という本を読んでみた。もともとは神戸大の鈴木竜太先生のご紹介(彼は私の所属していた静岡高校ラグビー部の1年上の先輩にあたる)だったのだが、読む本ややることが多くて、ついつい後回しになってしまった。


で、本論の内容。ビジネスは人がやることであるから、モチベーションの高いスタッフが集まる会社の業績が上がりやすいのは自明のこと。では、そのモチベーションはどのようにして高められるのか、ということを広範囲の企業リサーチにおいて明らかにしている。著者は、5つの「パス」として、モチベーションを高めることに成功している企業には、大きく分けて5つのパターンが存在しているとする。


(1)ミッション、価値観、誇り
(2)業務プロセスと評価尺度
(3)起業家精神
(4)個人による達成
(5)認知と称賛


面白いのは、どれか一つの「パス」だけでモチベーションを高めている企業は圧倒的に少なく、複数のパスを組み合わせている事例が多いということ。それから、企業の成長によって、効果的な「パス」は変化してくるということ。たとえばサウスウェスト航空の場合、創業当初はベンチャーとしての生き残りがその使命であったが、現在ではほかに三つのパス(①ミッション、価値観、誇り、②個人による達成、③認知と称賛)を極めて巧みに追及している。


組織が進化することによって各自のモチベーションドライバーは変わってくる、というのは感覚的にわかるところ。それをセグメント化し、事例とともに論じているこの書籍の功績は立派だと思う。


お勧め度:★★★

コミットメント経営―高業績社員の育て方 (Harvard business school press)

コミットメント経営―高業績社員の育て方 (Harvard business school press)