■11 Lessons by Guy Kawasaki

すっかり「CFO奮闘記」でなく、スタンフォード大起業家講義評論のようになってしまったこのブログだが、今回も懲りずに(?)講義評論を行うこととする。


今回取り上げたのはGuy Kawasaki氏による講義(http://ecorner.stanford.edu/playerPopup.html?groupId=45)。クレジットを見ると2004年ということで結構前の講義なのだが、現状でも十分ためになる講義だ。Kawasaki氏自身がマッキントッシュを導入したばかりの初期のアップルコンピューターにてエヴァンジェリストとして勤務していたため、非常に起業家に近い経歴を持っていることと、自身でベンチャーキャピタルを立ち上げた起業家でもあるため、その内容には説得力のある言葉が多い。


内容自体は11のレッスンから成り立ち、非常に具体的で現実的なアドバイスをくれているのだが、私が特に気に入ったのが、「3.Get Going」というところで紹介していた起業家としての心構えの話。彼はこの中で3つのアドバイスをしている。


(1) Think Different(まったく異なる発想をしろ)〜10%、20%、50%改善することを求めるのではなく、10倍優れたものを作り上げるのが起業家である。そうであれば、現状の改善案を求めてはいけない。そうではなく、まったく異なった発想で考えなければならない。


(2) Polarize People(好き嫌い極端なモノを提供せよ)〜誰もが好きなものなんて存在しない。多くの人が「その商品は嫌い」といっても、一定の人が「たまらなく好き!」と言ってもらえれば、それは商品として成り立つ。好き嫌いがはっきりしていて、中間がないようなものを求めなければ起業家ではない。


(3) Find a Few Soul Mates(ソウルメイトを見つけろ)〜スティーブ・ジョブスビル・ゲイツも、自分ひとりの力でそれぞれの会社を大きくしたのではない。そこには仲間がいる。自分が大きな失敗をしたときに、ひっぱりあげてくれる仲間がいる。冷たい仕打ちをされたときに温かく迎えてくれる仲間がいる。起業家はそうしたソウルメイトをしっかりと見つけることが重要だ。


会社がある程度形になってくると、そのモデルの精度を高めようと一生懸命になる。そのこと自体はいいのだが、ついつい初期のころは当たり前であった「まったく異なる発想をすること」だったり「極端であることを怖がらない」ということ自体に怖さを感じてくるのは、私自身も経験済み。特に、タスクとして決まった仕事を遂行している現場スタッフからすると、日常がブレイクスルーというわけにもいかない。


だからと言って、目的を忘れてしまってはいけないのだ。本当に今やっていることは社会を大きく変換させる試みなのか?今のビジネスモデルは天地をひっくり返すことが可能なのか?そのために中間的な商品を作ることで妥協してしまっていないか?これは経営トップしか考えられないことであり、トップが考えるべきテーマでもある。そして、常に確認できるような「原理原則」として手元においているか、会社の文化にしているのか、ということも改めて思い知った。


それ以外にも「Don't Write a Mission Statement」とか「Weave a MAT(Milestones, Assumptions and Tasks)」とか、非常にためになるtipsが盛り込まれた講義だと思う。


お勧め度:★★★★