■2010年の反省論

2010年もあと数日で終わりとなる。


この一年、特に後半は会社にとって非常に厳しい状況が続き、事業再編・人員縮小に手をつけざるを得ない状況になってしまった(そういう状況もあって、ここ最近このブログを更新する気分になれなかったのだ)。当社の理念や考え方に共鳴してくれた人たちが志半ばでこの会社を去ることになり、経営を担っていた者として心の底から申し訳ないという思いでいっぱいだ。


こうした結果になったのはすべて私たち経営チームの責任であることは明確だ。みんな頑張ってくれていた。成果というものはシンプルに考えれば「正しいことを(=勝てる戦略策定)」と「正しく行う(=実行力)」というたった二つの要素で決定されるわけだが、この両方のかじ取りを見誤ったことにより、みんなの頑張りを生かすことができなかったことがこの結果を生み出している。特に激変するペット市場において、市場や競合の動きの速さについてゆけない組織にしてしまったことは、リーダーシップの不足以外の何物でもない。大いに反省させられ、責任を痛感した2010年である。


危機に陥った本質的な要因は何なのか?この危機を脱するには何をするべきなのか?今回の危機に直面して、多くの企業の再生ストーリーをむさぼるように読み、その上で今当社が置かれている状況というものを冷静に分析することができた。今当社に足りないのは下記のポイントに集約されると思う。


(1)利益に対する強い意識〜社会性や理念との整合性と同じくらい利益を重視していたか?
(2)責任範囲のあいまいさ〜それぞれの責任を明確にしていたか?権限委譲が単なる「放置」や責任を取らなくてもいい形になっていなかったか?
(3)やりきることに対するレビューの甘さ〜「頑張っている」事を必要以上に奨励していなかったか?


当社とは規模は全然違う(おこがましい)けれども、カルロス・ゴーン氏が着任する前に日産が直面した危機というものもおおよそこのようなものであったようだ(http://www.tbr.co.jp/pdf/event/eve_a012.pdf)。部門最適化したセクショナリズム、意思決定の軸のあいまいさ、コミットメントとアカウンタビリティ(説明責任)の欠如。そして着目すべきなのは、それらの課題を当時の経営者が見過ごしていたわけではなく、むしろそれらをしっかりと認識していたという点。我々も事あるごとに上記の自社課題は認識していた。しかし危機に陥ったのである。


「分かっていたけどできていない」ということは、その解決の処方箋が簡単ではないことを意味する。打ち手の問題ではなく、意識や行動を変革することが重要であり、身にしみついた行動様式を否定し、悩み苦しみ、そこから逃げずに変革していくことを意味するからだ。日産の場合は結局当時の経営チームではなく、それまでの日産の失策を客観的に評価できる、ゴーン氏という強烈なリーダーシップを持った「外様」の就任により社内の雰囲気ががらっと変わったというが、当社の場合は経営チームがそのまま残り改革を行わなければいけない。つまり、根っこの部分からの自己否定と自己改革を行わなければ成し遂げることなんかできない、非常にチャレンジングな命題であると思っている。


ここに宣言したい。
カラーズ社を復活させるために、自分は生まれ変わる。当たり前のことができていなかった自分の甘さを律するために、これからのカラーズにおいて自分がとるべきプリンシプルを明確にしたい。


(1)利益志向
素晴らしい理念があろうとも、株式会社として市場で競争をしている以上、利益を出していない会社に存在価値などない。理念やクレドはこれまで通り大切な指針であるが、それと同じくらい、いや今おかれている現状を考えればそれ以上のパッションを持って、利益を生み出すことを意識して仕事をする。パスカルは「パンセ」の中で「力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力である」と述べているが、市場・競争・株式会社・資本主義の中で正義を追求するためにも、利益という「力」は絶対に必要なのだ。これからの意思決定は儲かる・儲からないを第一に追究する。社会的に意味があろうとも、いま自分たちがするべきことは、継続性のある会社を作るために利益を生み出すことだ(お分かりいただけるかと思うが、「正義なき力」になるような極端な利益至上主義はそれは「暴力」であって、同様に継続性を生み出さない)。


(2)コミットメントと説明責任
「頑張っている」事は必要以上に賞賛しないし求めない。これから求めることは「コミットしたことを成し遂げたか」という事。「これをします」はプロミス(約束)であり、コミットメントとは「これを何としてでもやり遂げる」ということだ。極端なことを言えば、頑張ろうと頑張るまいと、コミットメントをしっかりと守りきる厳しさを追求する。そしてその結果に対してしっかりと説明責任を求め、達成できたら賞賛し、達成できなかったら責任をとる。極めてシンプルな評価でもって臨む。


(3)競合と市場への視点
自分たちの想いを成し遂げるために、自分たちの価値観をブラッシュアップすることを否定はしない。ただし5年前のように、自分たちが独自のポジショニングをとり、直接的な競争相手のいなかったニッチな会社ではもはやなくなっている昨今、競合と戦って勝つ、市場の動向を見据えたうえで先手を打って適切なかじ取りをする、ということが極めて重要。クレドの追求と同じくらい、競合に対する目線、市場の変化に対する感度、そしてその中でリスクをとって挑戦し戦うという姿勢を大切にする。ガチで戦って勝つという新しいマインドセットがこれからは必須要件だ。


会社に残る者にとってもこれから厳しい戦いが待っている。崖っぷちを全速力で走りきるようなギリギリの状態が待っている。しかしやると決めた以上、覚悟を決めて走りきろう。この困難で修羅場のような状態が、後で笑顔で話せる日が来ることを信じて・・・