神戸マラソン挑戦記

去る11月17日に開催された神戸マラソンに参加してきました。僕にとっては第二の故郷である神戸の街中を走ることのできる神戸マラソン、ずっと参加したかったのですが、今年ラッキーなことに抽選で当選することができ、せっかくなので自己ベストを目指そうと思い数ヶ月間準備してきました。結果は自分でも驚くようなタイム(3時間13分19秒:手元タイム)でPB。このレポートでは備忘録を兼ねて、それまでの取り組み、当日のレース展開などについて書いてみたいと思います。

■目標と覚悟を決める

そもそも去年の大田原マラソンでサブ3.5を達成した時点で、実はもうフルマラソンはもういいかな〜なんて思っていたのでした。ところが、直後に大田原マラソンで一緒に走った仲間が名古屋ウィミンズで3時間20分切りでPB達成、別のチームメイトも大阪マラソンで3時間20分切りでPB。僕もこれくらい走りたいな〜と思い始めたのが、去年の年末くらいの話。

でも心の底からもっと速くなりたい、もっと強くなりたい、と思ったのは6月の横田駅伝でした。所属するランクラブのトップランナーチームのみんなの走りを見て、これくらい走れたら全く違う景色がみられるんだろうな〜と思ったのが今シーズンに臨むきっかけを作ってくれたのだと思います。興奮冷めやらぬうちに、仕事関係のMLで調子に乗ってサブ3宣言をしました。

先日の駅伝が終わって、もっと速くなりたい、もっと強くなりたいと思い、具体的に目標を決めました。フルマラソン3時間以内(現在の記録は3時間27分)。これがどれだけ無茶苦茶なことか、走っている人はわかるかもしれませんけど、覚悟を決めて自分で(←これ大事)目標を決めると行動も変わってくるんですよね。これ仕事でも同じ。

やっぱり宣言をすると、目に入る情報や、他からやってくる情報が変わってくる。さっそく仕事仲間の「市民ランナーのグランドスラム」達成者(フルでサブ3、ウルトラ100kmでサブ10、富士登山競走完走)であるMさんからこんなアドバイスをいただきました。

鷲巣さん、こんにちは。目標を口に出すことは素敵ですね。
さて、御参考までです。サブスリー達成のこつは、体を軽くすること、長い距離になれること、速いスピードになれることだとおもってます。
サブスリーはとても高い壁ですが、何かを諦めて時間を創出すればかならずできる目標だと思います。応援してます!

ほ〜、体重、長距離、スピードの3つですか。逆にその3つをしっかりすれば、まだまだ速くなるのだろうと考え、今シーズンに向けての戦略を立てることにしたのです。

■戦略を立てる

Mさんのアドバイスに従い、3つの点に絞って7月から11月までの4ヶ月間の練習を組み立てることにしました。

  1. 体を軽くする・・・横田駅伝の時の僕の体重が70キロくらい。できたら65キロまで落としたい。ということで、糖質制限、酒量制限、そして毎日体重を量りトラッキングすることでしっかりと節制することにしました。このとき使ったのが「カロリー管理(痩せるアプリ)」というiPhoneアプリhttp://bit.ly/1cdwMC2)。体重を落とすための日々の摂取カロリーの目安と、毎日食べた食事のカロリー記録、自分の体重・体脂肪を記録し、グラフ化させることができる優れモノです。これを毎日つけて、日々振りかえって確認することにしました。
  2. 長い距離に慣れる・・・夏場ということもあり、ロング走をなかなかやることが難しいので、長距離というよりは長時間の運動に身体を慣らすことに置き換えてロングライドを頻繁に取り入れることにしました。
  3. 速いスピードに慣れる・・・これまで心拍が上がるようなペースで走ることはあまりなく、キロ5〜6キロのジョグで朝ランをすることを中心にしてましたが、スピード練習を入れることに。最近TBRCの中でも参加者が多いトラック練習や、速いペースでのペース走およびビルドアップ走、ウインドスプリント走などを取り入れてスピードに慣れる練習を取り入れることにしました。最低でも週1回やろうと心に決めました。


さて、実際に7月から10月までどのように過ごしたか・・・簡単に振り返ると、

  • 体重は微減。11月5日の時点で68.5キロ(横田駅伝時と比べて▲1.5キロ減、でも目標まであと3.5キロ)・・・原因はシンプルで、食事は抑え気味だったけれども、酒量が減らない。仕事上やむを得ないと言い訳して飲み続ける日々。蒸留酒中心となっても、結局好きなビールを飲んでしまう・・・でもアプリの更新だけは毎日の日課としてやっていました。逆に太らなかったのはそのアプリのおかげかもしれません。
  • はっきり言って、タイムを速めるような練習量にはとても足りない・・・これは大きな反省。具体的には、
    • 7月: run 157km(11回)、bike 239km(8回)
    • 8月: run 97km(11回)、bike 330km(12回)、swim 10km(9回)
    • 9月: run 145km(14回)、bike 86km(3回)、swim 6km(4回)
    • 10月: run 154km(15日)、bike 310km(5回)、swim 6km(5回)
  • ただ、スピード練習は積極的に取り入れるようになった。たとえば、
    • 仲間と一緒に小机フィールドでのトラック練習に初めて参加。3000m→2000m→1000m→400m
    • 織田フィールドで開催されるアトミクラブのトラック練習(9月に入ってからは出張が多く木曜日に東京にいなかったので参加できなくなってしまったが)に参加。1000mのインターバルや5000mTTなど、これまででは想像もつかない練習を実施。
    • また土曜日のMBA講義の合間に皇居ビルドアップ走(5分00秒/kmからスタートして、最後は4分30秒/kmまで。3周〜4周)を実施。
    • 個人的にありがたかったのが、チームメイトが企画してくれた隔週火曜日の皇居ペース走。日々の練習の中で強弱をつけるポイントとして役に立った。
    • 通常の多摩川河川敷ランでも、河川敷の直線路5〜6キロは4分45秒ペースで走り、到着直前にウインドスプリントを3〜4本絡めるなど、普段からスピードを意識して走るようになった。
    • 長い時間に身体を慣れさせる意味で行った80km以上のロングライドは、7月以降5回。7月末には「オクム」という78キロ7時間超走りっぱなしのウルトラマラソンがあったので、これも長い時間の運動の一環かな?

■あと2週間・・・

あっという間に10月も終わり、神戸マラソンまであと2週間というところに来た。思ったように体重は減ってない。この段階ではスピードに慣れる練習を(以前と比べれば)増やし、20キロくらいであれば4分40秒/kmのペースで走ることができるようになった、ということだけ。後は疲労を抜いて、できるだけコンディションを整え、体重を減らすこと。この2週間だけは減量に集中しようと、心に決めた。

  • まず断酒!中途半端に飲むからやめられない。一切飲まない。が、こういう時に限って会食が多い。先輩方に神戸マラソンのことを正直に話して理解してもらう。おかげでもうノンアルコールビールに関しては、微妙な味の違いがわかるようになってきたw いったん酒をやめてみると、結構やめられるものですね。これを機に休肝日を増やします。
  • 糖質制限!これまで卵かけごはんでスタートしていた一日だったが、ごはんの代わりに豆腐。肉はささみ中心。外食の場合も糖質はなるべく少なくする。Tarzanの「正しい糖質制限ダイエット」(http://magazineworld.jp/tarzan/612/)を引っ張り出し、もう一度食事について注意を払う。
  • 有酸素運動を多めに!レース3日前まではそれまでと同じように走るが、加えてプラスアルファの有酸素運動を。トライアスロン連盟で会員になっているコナミスポーツに顔を出し、久々のスタジオプラグラムでエアロビクスをする。いつもと違ったトレーニングをすると気分転換になっていい感じ。ということで何とか66キロまで落とし込むことができました。目標の65キロには届かないけど、まあ、ちょっとは絞れた感じ。


直前3日はカーボローディング。うどん、そば、おにぎりをひたすら食べる毎日。あれほど欲しがっていた炭水化物ですが、最後はもううどんは当面いいかな、という気分に。でも結果として、レース中エネルギーが切れる感じはなかったです。

それからサプリの準備。今回はなるべく身軽にしたいので、サプリも極力少量に。糖質よりも脂肪燃焼を優先するベスパハイパー(http://bit.ly/1cFJlpV)3個とエネルギー補給のハニースティンガージェル(http://bit.ly/1cFJrOb)2個を準備。後はレース前、レース後に摂取するためのアミノバイタルゴールド(http://bit.ly/1cFJCJm)を購入。

■レース当日

スタート地点:神戸市役所前。午前7時の段階で天候晴れ、気温13度。

神戸のホテルは神戸マラソン参加者で満室だったため、この前日は大阪・心斎橋のホテルに宿泊。4時起床、エネルギー源であるおにぎり2個、どら焼き1個をほうばって5時半出発。出張がらみのため荷物が多いので、三ノ宮駅のコインロッカーに荷物を預けるために早めに出発する。遅くなると限られた数しかないコインロッカーが満杯になってしまう可能性がありますからね。

6時半三ノ宮駅到着。電車の中は少数のランナーと、圧倒的多数の夜を徹して遊んだ人たちでそこそこ客がいる状態。コインロッカーはまだまだ空きが多かった。この分だともう少し遅い到着でも大丈夫だったかも。7時から荷物預かり開始だが、まだまだ時間もあるし、外は冷えるので、24時間営業のマクドナルドでコーヒーを飲む。kindleiPhoneにダウンロードした三浦しをんの「風は強く吹いている(http://amzn.to/1bORDgS)」を読む。弱小大学陸上部の個性的なメンバーが箱根駅伝を目指し奮闘する物語。ストーリーは滑稽だけど、走る前にテンションを上げるにはちょうどいい。

当日のレースプランは次の通り。

  • 当日の天候は晴れ。気温はスタート時13度、正午には18度くらいまで上がるので、ノースリーブで勝負。アームカバー、手袋は必要なし、ということで置いていく。
  • キロ4分40秒のペースで粘り、後半戦ペースアップ。特に前半突っ込みすぎない。
  • 脂肪をエネルギーに変えてくれるベスパハイパーはスタート1時間前、20キロ地点、30キロ地点で投入。ハニースティンガーは、エネルギー切れになりやすい35キロ地点で持つように32キロあたりで投入予定(1個は予備)。
  • 辛さが出てきたらiPod shuffleに入れているトランスの曲をオン。ハイテンションの音楽に合わせて走る。
  • コースを見ると、いくつか設けられている直角に曲がるコーナーと、35キロ地点で高架に駆け上がる急こう配が注意ポイントになるだろう。特に35キロ地点の急こう配はスタミナがないと心身ともに苦痛に感じるので、そこまで余力を持たせることが重要。
  • 同じペースの美女ガーを見つけてロックオン。ひたすらついていくこと。

8時に荷物を預けた後はレースの格好でスタート地点へ。神戸マラソンはスタート地点とゴール地点が異なるので、僕のように一人で参加している人はレースで持つもの以外はすべて預けなくてはなりません。この時点でノースリーブシャツ1枚。ウォーミングアップ、ダッシュを数本繰り返し心拍を最高レベルにまでもっていくも、スタート地点に並んでからスタートするまで30分ほどあったので身体が冷えてしまった。アームカバーと手袋、もしくは途中で捨てられるビニール袋などを用意しておいたほうがよかったですね。スタートセレモニーを見ると、神戸市が全力を挙げてこのマラソン大会を作ってくれているのがわかる。神戸の街中を思いっきり走れる環境を作ってくれたことに改めて感謝です。


スタート〜10キロ (10キロ通過タイム0:45:54)
午前9時。大会名誉会長である神戸市長による号砲とともにレースがスタート。神戸市役所をスタートし、200メートルくらいで直角に左折、元町大丸方面に向かう。その後も直角に曲がるコーナーが頻繁にあるが、僕のスタートブロックがAブロックということで前方からのスタートだったため混雑はほとんどなし。自分のペースを乱されることなく、渋滞することなく走ることができる。最初の入りがキロ4分28秒、4分20秒ということで、やはり周りのペースにつられて速いペースでの入りになってしまう。4分40秒に戻すべく、スピードダウンをする。寒くない、暑くもない、風もない、というベストなコンディション。体調もいい感じ。ついつい速くなりそうなペースを理性で抑える。このくらいがちょうどいいのかもしれない。

実は9.6キロ地点の給水所は僕の古巣のP&Gスタッフによる運営のもの。facebookで何人かの友人がこの給水所でボランティアをしているということを聞いていたので再会を楽しみにしたのだけれども、残念ながら見つけることはできず。でもP&Gだけでなく、多くのボランティアの方、沿道の声援に後押しされたことを実感できた大会でした。


10キロ〜20キロ (20キロ通過タイム1:31:24、10キロラップ0:45:30)
10キロ過ぎから海沿いの道を走って折り返しの明石海峡大橋に向かう。大橋の姿は大きく見えるのだが、そこからがなかなか距離がある。それほど大きな建造物ってことか。さて、ペースは4分40秒を割り込むペース。今はまだ速くならなくていいと理性でペースを抑える感じ。だから苦しくない。スピード練習の成果か。これがずっと続いてくれればいいのだけれども。
18キロ、明石海峡大橋を折り返す。これまでは気がつかなかったけれども結構風があるようだ。折り返してからは向かい風。ペースの同じような人の後ろについて、風よけになってもらう。
折り返した少し先、中央よりで走っていたところ前方から所属しているチームのシャツを発見!仲間とすれ違う。一瞬だったけれどもお互いにエール交換して健闘を誓い合う。仲間の存在は心強いですね。ペースは依然として維持したまま。後半戦に向かう。


20キロ〜30キロ(30キロ通過タイム2:17:25、10キロラップ0:45:36)
中間地点のタイムが、グロスで1時間36分ちょっと。おおっ!この時点で約3分ほどの貯金あり。ペースは依然4分30秒+アルファのペースで維持。足も痛くないし、疲れも感じない。どうやら今日はこのペースでいけるみたいなので、もう4分40秒に押さえる必要はないと判断、4分30秒をひとつのめどとして進む。非常にいい感じだが、異常を感じたときには時すでに遅しなので、予定通りベスパハイパーを投入。エネルギーも充実している感じだけど、25キロを過ぎたところでハニースティンガーも投入。iPod Shuffleに入れていた13曲のトランスミックスをオン。
コースは26キロすぎに海岸沿いの大通りから下町エリアに入っていく。沿道の声援はこれまでず〜っと途切れない。声援に手を振りながら快調に走る。死角なし。


30キロ〜40キロ(40キロ通過タイム3:03:04、10キロラップ0:45:39)
ノエビアスタジアム神戸中央市場、モザイクといった僕にとってなじみの場所を通過。若干崩れそうになるフォームを見直す。腕の振り、前傾姿勢、脚のけりを再度意識する。
30キロ地点で2回目のベスパハイパーを投入、33キロ地点で2回目のハニースティンガーを投入し、35キロすぎの難所・浜手バイパスの上り坂に備える。
この急こう配は最初の150メートルで10メートル以上登り、またその先ポートアイランドに差し掛かる橋に向けてもう一段登りがある。これまで皇居の竹橋〜代官町の登りなどでも感じていたけど、実は結構登りは得意。心拍は多少上がるけど、ギアを変えてペースアップして気持ち良くぐいぐい登る。何人かをす〜っと置き去りに。いける。
バイパスの上でも中高生が声援を送ってくれる。本当にうれしい。元気になる。右手にはポートアイランドが見えてきた。いよいよゴールはすぐそこだ。長い下り坂を前傾フォームを意識してペースアップして駆け下る。オクムで最大の弱点だった下り坂の走り方についても皇居ランで練習してきたつもりだ。このタイミングで練習の成果を出せたことがとてもうれしい。


40キロ〜ゴール
いよいよポートアイランド。安心をしてしまったか、ここまで順調に4分30秒ちょっとで進んでいたペースががくっと落ちる。手元のガーミンでは40キロ地点での1キロのペースが4分48秒に落ちている。去年の大田原のときもそうだった。3.5時間でゴールできそうだと思った瞬間にペースが落ちてしまった。これが自分の精神力の限界。この自分の限界を超えるには、ペースを落とさずにゴールすることしかない。それができれば次のレースの自信になる。もう一度奮い立たせ、腕を振って、フォームを意識し足を前に進める。前へ、前へ。ゴールに。目標とするタイムに。大田原のときの自分よりも強い自分に向かって。

3時間13分19秒。僕の神戸マラソンはこれ以上にない成績で終えることができた。その走りを支えてくれたボランティアの人、沿道の声援、そしてこれまで一緒に走ってきてくれた、応援してくれた仲間に感謝です。

■次のステージへ・・・

冒頭にも書きましたが、僕の目標はあくまでもサブ3。だから今回の神戸マラソンのPBはとっても嬉しい結果ではあるけれども、あくまでも通過点です。
もちろんサブ3になるためにはこれからのほうが難しいとも思っています。体重をさらに絞って、練習量を増やし、フォームを改善して、最後までペースを落とさずに走りきれるだけの走力と、自分に負けない精神力を養わないといけないのは重々承知してます。
今シーズンは京都(2月)および静岡(3月)と素晴らしいフルマラソンにエントリーすることができたので、来シーズンのサブ3挑戦につながるような走りをしたいと思ってます。