■夢を嘲らわない

全人類が兄弟となり、戦争が人類を引き裂くことはなく、戦争のうわさが女性の心に恐れを抱かせることもない未来の夢を私は夢見る。私の夢のことで私を嘲らわないでほしい。夢こそ来るべき時代のさきがけだからである。進歩はすべて一連の夢である。一つの夢が実現すれば、それは文明発展の一時期を課するのである。偉大なる夢想家が見た夢で、無駄だった夢はない。偉大なる夢でそれに姿を与える実際的天才がみつからなかったものはない。

新渡戸稲造「編集余禄」1933年5月7日